恋愛小説

The wind from the sea is blown on you(海からの風は君に吹いている)



Scene5

二人を乗せた オープンカーは 相変わらず 心地よいエンジンサウンドを奏でながら 夜のハイウエイを つき進む オレンジ色の外灯が 車のエンジンサウンドと共に 一定のリズムで 一瞬で 面白いように 涼うと美由紀のコントラストを光と影へと導いてゆく

「涼 お願いがあるんだけど」美由紀が言った 「何?」 涼が答えた 美由紀は 「あのね 遠回りになるんだけど 湾岸線で帰らない?」 「あぁ 湾岸線? 俺ぁ良いがなんでまたァ?」涼が問い返した 美由紀は少し照れながら「遠回りしたほうが 涼と少しでも居れる時間が長いじゃん」と相変わらず悪戯な目で涼に言った

涼が答えようとしたら続けて美由紀が 「それに 湾岸線って 景色最高じゃん!」 「OK!」涼は湾岸線へと車を走らせた

そこは 美由紀が言った通り 絶景のパノラマであった 東へと進む涼の車からは 遠く左手には六甲山の街並み そして 近くには 阪神高速のオレンジ色の外灯 すぐ下には 工場のイルミネション 右手には 斜めに 大阪湾の灯り 関空の灯りも確認できる

ハイウエイの外灯が ネオンサインの如く 二人を 前から後ろへと 明暗のコントラストが流れて行く そんな 映画のワンシーン見たいな中で 「涼 やっぱりこっちで 正解だったね 景色がとっても最高じゃん!」 美由紀が自慢げに言う 「あぁ 最高だなぁ でもなぁ」涼が言葉を止めた 「涼 何よ!? 私と居て 何かあるの?」怪訝そうに美由紀は言った

「いやぁ そうじゃない 景色も最高だが こうやって 美由紀と居る方が もっと 最高だぜぇ!」と涼は言った 美由紀は そんな返事が返ってくるとは 思いもよらなかった その分 嬉しさは何十倍位にもなった

「きゃー涼 最高ー!」と思わず涼にしがみつく 「あ 危ねぇ!」一瞬 車は大きくぶれたが 大事には 至らなかったそうこうしている内に 美由紀の家まで あと僅かまで帰ってきた 「涼 家に寄ってく?」美由紀が訪ねた 「あぁ 俺ぁ 良いよ 帰るわ」と涼が さっきとは違うつれない返事に 「どうしてよ 少しだけでも寄ってたら良いじゃん」美由紀は不満げに言った

まもなくして車は 無事 美由紀のマンションへたどり着いた

 

「あぁ また今度にするわ」と涼が済まなそうに言った 美由紀は「いや 絶対今日は お家に上がって貰うから!」と言うなり涼の腕をグイグイ引っ張り始めた 「お おい 美由紀! 」と涼が焦って言う お構い無しに美由紀は とうとう 涼を 自分の家へと強引に 引っ張り込んだ

涼は 一人暮らしの まして 親子ほど歳の離れている 独身女性の部屋に 一人で入るのは それなりの抵抗があった それに 今まで 何度も 送って来て その度に 美由紀の誘いを拒んできた だが 送る途中 つい 本音が出てしまい 美由紀もそれを察したのか いつもより強引であった

涼は 覚悟を決めて みゆきの誘いに乗った この時 涼 41歳 美由紀 20歳


次回に続く


 















 

The wind from the sea is blown on you(海からの風は君に吹いている)


Scene4


二人は食事を済ませ 家路と向かう 実は 涼と美由紀は 遠距離恋愛だった といっても 遠距離というより 近県同士という方が 当てはまるかもしれない 取り敢えず涼は 美由紀の住む街へと 車を走らせる 

涼の愛車はビンテージカーで逆輸入のダットサンSPL310だ 車好きの涼が選んだとあって R型のエンジンはそこそこチューンされ ソレックスのキャブから奏でる吸気音は辺りの人たちを 魅了した

車は 湾岸通りから 一気に 阪神高速神戸線へと 駆け込んだ ランプの合流から 直ぐさま 追い越し車線へ 物凄いレーシングサウンドと共に あっという間に 法定速度を後にした オープンカーという事もあって 風が強く車内に吹き込み 美由紀の黒く長い髪は レイプに近いくらい 弄ばれている 勿論 二人の会話なんて 今は 不可能に近い状態だった

車は 相変わらず 良いエンジン音を奏でながら カッ飛んでいく そんな折 美由紀が何やら必死で 身振り手振りで言っている だが 凄まじい風の音には勝てず 直ぐに かき消されてしまう 「何だぁ!」涼も必死に聞くが 美由紀に伝わらない 仕方ないので すぐ先のパーキングへと車を滑り込ませた ブゥオン!!車は パーキングに止まった すると美由紀は 止まるが早いか ドアをハネ開け トイレに駆け込みに 猛ダッシュして行く その姿を見た涼は全てを理解した 美由紀の必死の訴えは トイレに行きたかった それも我慢の限界が来てたのだろう

涼は美由紀の 必死の形相を思い出したら 済まないが笑えて来た ニャニヤ笑っていると 美由紀が すっきりした表情で 戻ってきた 車に乗るなり 美由紀は「もう 信じらんない もう少しで おもらしするとこだったわよ」

「ハハハ 間に合って良かったなぁ 俺に感謝しろぉ」と涼が言うと「でもあんな中でよく私がトイレだって分かったね」「あぁ 美優紀のことなら何でも分かるさ」自慢げに答える涼だったが実は偶然と言うか 何を言ってるのか分からなかったので車を止めて聞きたかっただけなのだ そんな事も知らず「涼 ありがとう」と美由紀が言うと 「い いやぁ まぁ それ程でも」とぎこちなく言った 「今度ぁ ゆっくりと走るわ!会話が出来るくれぇになぁ」とちょと済まなさそうに涼が言った 「うん」美由紀も快く返事をした

キュルキュル ブォン!! エンジンを掛け 再び車を走らす パーキングに 心地よい エンジン音を 残しながら二人の乗った オープンカーは 夜のハイウエーと消えていった


次回に続く 










   

The wind from the sea is blown on you(海からの風は君に吹いている)



Scene3

涼は 足を挫いた 美由紀を負んぶしながら モザイクの方へと歩いて行く 近づくに連れ また 街の灯りも段々明るくなって来た 涼の背中で寝ている美由紀は その眩い光に起こされた 「う~ん? 何処?」美由紀は 半分まだ意識が盲ろうとする中呟いた

「あぁ 美由紀 起きたか?」 涼が振り向きながら言った 美由紀はやっと目覚め辺りを見回すと 理解した 「私 眠ってたんだぁ 涼 お腹すいたぁ」 美由紀が甘えたな声でねだる

「ったくぅ 目覚めの開口一番が 腹ぁ減ったぁ?へぇへぇ 参っちまうぜぇ 全くぅ それより 大丈夫か?」 涼がまだ心配して言った すると美由紀が「何が?」って人事みたいに聞いた「はぁ?美由紀さっき転けて足ぃ挫いたろ?」と涼が返すと「 あぁ~アレね!フフ ぜーんぶ嘘!」美由紀は またまた悪戯な目で 涼を後ろから覗き込むように言った 「あぁ~やられたぁ~ったくぅ 冗談じゃぁねぇぜぇ ! 降りろ!」涼が言うと「いや!絶対いや!」

「なぁに言ってやがる! 本当は 美由紀重たくて 手が痺れちまってる 早く降りろ!」涼が命令口調で言っても美由紀は一向に気にせず「いやだ! 絶対にいや!」なを言い張る美由紀に涼は 「美由紀ちゃーん 本当に 良いの?」

不気味な声で言った 美由紀も何かを悟った瞬間 涼がこの「野郎ー」と美由紀を こそばし始めた 「キャァーガハハハハ こそばい!止めてぇーグハハハハ」 こそばがりの美由紀にとって死ぬほど辛い 

とうとう美由紀は 「ご ごめんなさいーガハハハハ」と 笑い転げながら謝った そしてとうとう 涼の背中から 降りた美由紀に「ホント心配したんだぞ」と不意に抱きしめ ちょっと真面目な顔で美由紀の目を見据え涼が言った

この時ばかりは 美由紀も涼の自分を思ってくれてる気持ちがヒシヒシと感じられ(涼は口に出して余り言わないけどホントは私の事凄く思ってくれていてそれでいて 何時も我儘な私を何だかんだ言いながら受け止めてくれてそれなのに私は悪戯ばっかして ごめんなさい)と心で思うのだった

「まぁ どうもなけりゃ それでいいやぁ 飯行くか?」涼が聞くと「行く行く!」と即効で美由紀が答えながら また例のごとく 涼の腕にしがみつく 「やれやれぇ 大したお嬢さんだぜぇ へぇへぇ この先が 思い遣られるぅ 全くぅ」一人ボヤく涼 そんな事はお構いなしな美由紀 二人は モザイクの街へと 歩いて行った 


 次回つづく





 





  

The wind from the sea is blown on you(海からの風は君に吹いている)

Scene2


結局美由紀は 観覧車には乗らず 涼の腕を 組むというより ギュッと抱きしめて一緒に 夕闇が迫る岸壁を歩いている

街はまるで夜空の星のごとく 一番星が輝いて それにつられて 他の星たちも輝くように ポツリ ポツリと街の灯火は増えて行き やがて1000万ドルの夜景へと姿を変えて行った

「あぁーいつの間にか 綺麗ー 私神戸の夜景 だーい好きぃ!」と美由紀は目を輝かせて言った 「本当だなぁ」涼も感心するように言った

「でも美由紀ぃ」と涼が言うと 「なぁに涼?」と美由紀が答えた 「いやぁ 腕を組むのは 構わねぇが その俺の腕を 抱き枕見てぇにしがみつくのを 止めてくんねぇか? 歩きにくくてしょうがねぇ」苦笑いしながら言うと

美由紀は「いやぁー!絶対いや!」と 言いながら 余計いに力を入れてくる 「全くぅ 我儘なお嬢さんだぁ」と涼が半ば諦めるように言った すると美由紀が「あのね 私にとって涼は凧なのそ…」とまだ話の途中で涼が「タコ?この俺がぁ?よしてくれぇ 確かに俺ぁ頭も薄くなってきてる でも タコはねぇだろぅ?」と呆れている

「バーカ 人の話最後まで聞きなさいよ!誰が海にいるタコって言ってたのよ あのね 良い?涼はぁ 空に上げる凧見たいで 糸が切れると どっかに飛んでいっちゃうでしょ?だからぁ 糸が切れても大丈夫なように こうやって 涼にしがみついてるの! 分かった?」 美由紀がまた悪戯な目で 涼を下から見つめながら言った

涼はこの美由紀の悪戯な目に弱い 「あぁ 分かったぃ 凧… ねぇ」と小さな声でつぶやく 「ん? 涼 何か言った?」美由紀が聞き返した 「いやぁ 何でもねぇ」涼が言うと 「そう」と美由紀が答えた

二人はそんな会話をしながら淡く幻想的にライトアップされた海辺を歩いいて行く 海からは心地よい風がまとわりつく様に吹いている 暫らくして二人はベンチに腰を降ろした  岸壁の突堤付近で少し薄暗いという事もあり 辺はカップルだらけだ しかしそこからの眺めは 正面には六甲アイランドを含め摩耶の工業地帯の灯りが 右には灯台の灯り 海を行き交う船の灯り そして 左を見ると モザイクの店灯り さっきの大観覧車のイルミミネーション
さらには ポートタワーのライトアップ その向こうに 阪神高速のオレンジの灯り さらには 六甲の山頂に輝くイカリマークに神戸市のマークという 素晴らしい眺めだ

「ねぇ 涼 私のこと好き?」と美由紀が言った 「何で 今更?」と涼が答えた 美由紀は 涼の味気ない返事に 一瞬寂しそうな表情で 「もういい」 と それきり喋らなくなった しばらくの沈黙の間 涼は (歳の差があるのは分かってて付き合った それに 美由紀は俺には勿体無いくらいの女だ もっと 同世代か 若いイケメンがいるのに 何でよりによって俺なんだ 俺といて 本当に幸せになれるのか?)涼はそんなことを考えながら 「美由紀 じゃぁ 反対に聞くけど 俺のこと どう思う?」と言うと 美由紀はスクッと立ち上がり 涼の顔を覗き込み また 悪戯な目で


「タコ」と如何にも人をからかうように言った 涼は「あぁ この野郎!」と立ち上がるか早いか 美由紀は 「きゃぁー」と言いながら走って逃げる その後を追いかける涼 

そんな矢先 美由紀が 足を絡ませ 転倒した 「痛!」美由紀が声を絞るように言った 「大丈夫か? 美由紀!」涼が問いかけた 黙ったままの美由紀 「おい 美由紀 大丈夫か?」 なおも心配する涼 「だ ダメ 足 挫いちゃったみたい」 申し訳なさそうに 答える美由紀 「おおぅ 分かった 負んぶしてやる さぁ 俺に捕まれ」 美由紀は「う うん」と言いながら 涼の背中に覆いかぶさった 「いいか?しっかり掴まってろ!」涼が力を入れながら美由紀に言った 「よいしょっと」涼は美由紀を負んぶした 「美由紀 案外 重てぇな」何気なく涼は言った 「バカ」と一言言いながら美由紀は涼の頭を軽く叩いた 「痛ぇ 何すだよ」涼が後ろを向きながら言った 

「フフ でも 涼の背中 とっても暖かーい」と美由紀は言った またまた小さな声でつぶやくように「俺は 重たいがね」」と言った 何気に 後ろをみると 美由紀は疲れてたのか 知らぬ間に 優しい天使のように 眠っていた



次回続く 





  
















The wind from the sea is blown on you(海からの風は君に吹いている)

俺は神戸のモザイクで 独り海を眺めてる 沈みゆく夕日の淡いパステルピンクに紺碧の濃淡が織り成す自然のア

ートに包まれながら 心地よくそれでいて夕日の最後の抵抗の中で寂し気な風が 俺の体をすり抜けてゆく

そう 俺はまた 此処に来ちまった いつも二人で周囲を気にすることなく 戯れ合ってた お前の真っ黒な長い

髪の毛が 海からの風にもて遊ばれ 俺の頬をくすぐってゆく ちょうど十年前になるか あの 日から…




「いやー神戸はいつ来てもいいなぁ」と涼が気持ちよさそうに背伸びをしながら美由紀に言った 「あぁー本当 景色

も良いし風も気持ちいぃー」と美由紀もめいいっぱい両腕を突き上げ背伸びをした そして 間髪入れずに 「涼!ねぇ!観覧車乗ろう!観覧車!」と子供のように目を輝かせて俺を誘う 「あぁ 観覧車?俺ぁいいよ お前一人で乗ってこいよ」涼は消極的だった

「もう!いつも一緒に乗って来んないんだから!何でよ!私のこと本当は嫌いなんでしょう?!」美由紀は涼の態度に不満だった 涼にしてみれば 親子ほど歳の離れた美由紀と観覧車にのるのに抵抗を感じてたし

実は高所恐怖症でもあった涼は 一緒に乗って 彼女の喜ぶ顔が見たかったが こればかりは

どうにも成らなかった


この時 涼 41歳 美由紀 20歳 「だから 違うって お前のことはちゃんと思ってるってただぁ」言葉を濁す涼に

「もう良い!一人で乗ってくるから!涼のバ~カ!」そそくさと乗り場に歩いてゆく それを追いながら「み 美由紀!」

「おい!待てよ!」追いついた涼に くるりと振り返ると 「涼 本当は 高い所が苦手なんでしょう?」

美由紀は悪戯な目をして 涼を したから覗き込む 図星の涼は「バ バカ言え!違わい!」としどろもどろに答えると 美由紀は 「へぇーやっぱり怖いんだ いい歳して 観覧車が怖いんだ 涼の弱虫ぃー弱虫ぃ」とはやし立てる

涼も段々ムキになってきて「そんな事ぁねぇ!絶対ねぇ!いい加減にしろー!」 美由紀は「やーい!やーい!」

とまだはやし立ててる ふと周りを見渡すと 周りには ほかのカップルやら家族連れが ニヤニヤ笑ってる

美由紀はそれを見ると益々悪戯な子猫みたいに 「みなさーん!この人 観覧車が怖くて」と言う途中に割って入って

来た一人の品の良さそうなお婆さんが「これこれ 娘さん お父さんを あまり困らせるもんじゃないですよ お父さん

困っていらっしゃいますよ」ニコニコしながら美由紀を諭した 「あ!ごめんなさい」流石にやり過ぎたと思い素直に

謝った「いい娘さんですね それに 真っ直ぐな綺麗な黒髪 今時珍しい」お婆さんが 涼にも話しかけてきた

「いやぁ まぁ」涼が 照れくさそうに言った お婆さんはつづけて「本当に仲の良い親子だこと 見てて 羨ましい

くらい これからも おふたり仲良くね」そう言いながら お婆さんは軽く礼をすると 立ち去っていった

涼は複雑な思いだった 親子…かぁ まぁ そう見られて当然だがなぁ そう思っていると 今まであんなに

はしゃいでいた美由紀がうつ向き加減で「涼 ごめんなさい 私 調子に乗り過ぎちゃった」「な なぁんだよ気に

すんな 今に始まったこっちゃねぇ それより 一緒に乗ってやれなくて ごめん」気がつけば二人共 うつ向き

加減で謝っていることに 何だか 妙に可笑しくなってきて 最初に涼がクスクスと肩を揺らし始めると 美由紀も

クスクスと肩を揺らし始め 終いには 二人共 大笑いしていた 涼は 歳の差なんて関係ねぇ この 囁かな

幸せが いつまでも続きますように 美由紀の笑い顔を見つめながら そう 心でつぶやくのだった



 次回に続く



  
 

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