Scene7


「涼 バカねぇ 大丈夫?」まだ笑いながら美由紀は言った 「ゴホ ゴホ あぁ 何とかなぁ 死ぬかと思ったぜぇ」と涼はむせながら言った 美由紀は奥の部屋から 何か 本みたいな物を 持ち出して 涼に見せた 「ん?何だぁ」涼は訝しげに言った 美由紀は「まぁ 見てみて」と涼を 促した 涼は進められる通り それは よく見ると アルバムであった「あぁ アルバムかぁ?」 涼は ページを開いた そこには 真っ黒な それでいて 銀色に 輝く 鋲をあしらえた 革のジャケットに革のパンツに身をまとう 一人の女性が写っていた よくよく見ると マイクを握り締め 長い髪を振り乱し SMの女王様見たいな ケバい化粧をした 美由紀 その人であった 「えぇ?こりゃ何かの間違いだぃ ここに写ってるのは 美由紀じゃぁねぇ!」涼が言うと 美由紀は ニヤニヤ笑いながら 「じゃぁ 誰に見える?」 と言う 「誰って 美由紀じゃねぇ 似てるけど違う て言うか 誰なんだぁ?」涼が答えた 「私よ! 間違いなく!よく見てよ 首筋のところに ほら 涼も知ってる ホクロがあるでしょ! ね!」と美由紀が言った そう言われると 確かにホクロがある 「へぇへぇ 驚いたねぇ 美由紀かぁ? でも 女って化粧で化けるねぇ」涼が感心しきりに言う 「フフ これはね 涼と付き合う前に 私 ヘビメタのリードボーカルしてて 女性初のデス声で 割と 有名だったのよ」と軽く自慢げに言った 「へぇー でも そのデス声って何だ?」涼が聞き返してきた 「あのね そうね 重低音! フフ もっと分かりやすく例えたら うーん そう エクソシストのあの悪魔の声見たいな」美由紀が答えた 「エクソシスト?悪魔の声? あぁ 何となく分かったぜぇ そんな声 出るんだぁ へぇへぇ 大したもんだぁ」と涼は言った 美由紀は「見かけによらないでしょ?」と微笑みながら言う 「いやぁ ホント いつも悪戯な子猫ちゃんが 悪魔の声で歌うなんて 信じらねぇぜぇ まったくぅ」 と涼がまだ半分信じられない様子で言った 美由紀は「じゃぁ 証拠見せたげると CDを持ち出してきて デッキにセットして 自分が歌っている曲を鳴らし始めた そこには ヘビメタ特有の 激しいリズムで ドラム リードギターの甲高い音に負けず まさしく デス声 悪魔の声で歌っている でもそれが 美由紀本人なのか 全く分からない 涼は 「これ? 美由紀?」まだ信じられず言った 「そうよ まだ信じらんない? そう じゃぁ これで どう?」と言って 曲に合わせて まさしくデス声美由紀は歌った 「へぇー間違いねぇ 美由紀だぁ」涼は認めた「フフ ね!」美由紀は得意げに一言言った そうこうしている内に 時間も進み 涼が「あぁ もうこんな時間かぁ 美由紀帰るわぁ 」と言うと 「えぇーもう帰るの?もう少し居てよ!あ 何なら泊まっていく?」と美由紀が言う「いやぁー無理だぃ明日仕事だし 朝がは早ぇ」と涼が困ったように言う 「いいじゃん!朝早いなら こっから朝早く出れば」譲らない美由紀 「よしてくれぇ それじゃぁ 明日ここを 朝の4時には出なきゃなんねぇ 無理だぃ」拒む涼 美由紀は我がままを承知で言っているそれなりの理由があった それは 今まで付き合ってきて半年 未だ キスこそあれ男女関係がないのであった それが 美由紀にとって 違和感があり 今日 涼が部屋に来た この日が チャンスとばかり 粘ってみせた そして 美由紀は とうとう 実力行使に踏み切るのだった 涼は そんな事も露知らず 帰りたいけど 美由紀の一緒に居たいという気持ちと 板挟みになりながら 部屋に留まっているのであった


次回に続く