Scene6


美由紀の住むマンションは 街の中心部に近いが 国道から少し奥まっている事もあり 割と落ち着いた清楚な所だ 都会のマンションらしく オートロックのエントランスを潜り エレベーターで最上階まで一気に駆け上がる そして ドアノ暗証番号を入力する ガチャ 音がして ドアが開いた

「へぇーやっぱり都会だぁ 田舎と違うねぇ」涼が感心しきりに言うと 「何が」不思議そうに美由紀が言った 涼は「いやぁー俺の街ではここまでの設備のマンションはねぇ」そう言うと 「あぁ そうなの 都会じゃぁこれくらい当たり前よ それに 新しいマンションじゃ カードと暗証番号ね 私が今おした暗証番号の横に溝があってそこにカードを通すの」と美由紀がさらりと答えた「へぇへぇ 驚いたねぇ」また感心する涼 

「どうぞ上がって」美由紀に促され部屋に入る涼は「へぇーこりゃ良いや!」また涼が驚いたように感心する 「え?何」と美由紀はまた不思議そうに聞いた 「いやぁーリビングから見る景色最高だねぇ」涼が言う 「あぁ 景色ね きれいでしょ? でも ずっと住んでるから慣れちゃったフフ!」微笑みながら美由紀は言った

涼が感心するのも無理はない 美由紀の部屋は18階の最上階それも角部屋でその角部屋の二面に面したガラス張りの部屋が ちょうど リビングルームに当たる そこから見下ろす景色は 遠くに見える高速道路の都会ゆえに複雑に絡み合うオレンジ色の外灯 ビルの灯り 中程には表通りを行き交う車がビルの隙間から見え隠れする 大パノラマを一望できたのだ

「涼 今お茶入れるね 待ってて」 美由紀は言うと リビングに続いて有るカウンターの中に入った キッチンとリビング合わせて20畳くらいは有りそうな そんな部屋を ぐるりと見回す涼 「お待たせ こっちに来て」 美由紀が涼をリビングにこれまた続いている和室に誘った 涼は さっきから感心しきりだ (よくまぁこんなマンションに独りで住んでるなぁ それに 家賃月にどれくれぇだぁ)などと一人思いを巡らすのであった

「どうしたの?さっきから黙ったままで 何か 気に入らない?」美由紀が不安そうに聞いた 「あ いやぁーそんなんじゃねぇえ 気にしないでぇくれえ ただ 感心してたのさぁ こんな 最高なマンションに独り暮らしで まして 月の家賃どれくれぇだろって」 涼が素直に言った 美由紀はジーッと涼をあの悪戯な目で見つめながら 「聞きたい?」と涼の追求心をくすぐる 「あぁ 是非 聞きたいねぇ」涼が言うと 「フフ な い しょ!」とまた悪戯な目で笑っている 「あぁ まただぃ クソ野郎 もう 聞かねぇ」涼が半分呆れるように言った 「涼 怒った? スネちゃった?」 と美由紀が尋ねる「もう いい!」と涼はテーブルのお茶を飲もうとした 「美由紀 コーヒーじゃねぇのか?」と涼が効いた 「あ コーヒーのが良かった?私 コーヒーよりお茶が好きだから つい お茶を入れちゃった ごめん すぐ コーヒーいれなおすから」と言って立ち上がろうとする美由紀 「いやぁ お茶でいいよ」涼が言った 美由紀が「ホントに?」と聞いてきた「あぁ お茶でいい 良い匂いしてんなぁ」涼はそう言って一口飲んだ 「どう? 美味しい?」美由紀が気になる様子で聞いてきた「あぁ マズイ!」と涼がい一言いうと 「えぇ~ホント!?」驚く美由紀に涼は「へぇへぇ 嘘だぃ 美味しいよ!」美由紀は「あぁーやられたぃ クソ野郎!」と涼の真似で言う 「ん?何だそりゃァ? 俺のマネのつもりかぁ?残念だがぁ 似てねぇぜぇ」涼が返す「もう!涼の バーカ!ちょっとは お世辞言いなさいよ!」今度は美由紀がすねた様子で言ったすると涼が 思いっきり女性の声に近づけた裏声で 「美由紀 怒った?スネちゃった?」とまで言い切ったが「ゲフゲフ」と喉を詰まらせながら「お 俺にはぁ 無理でぃ 美由紀の真似は 出きっこねぇ!ゲホゲホ」とまだ 喉を詰まらせながら 涙目で言った 美由紀はそんな涼の姿を見て 大笑いしている

こうして 何でもないような事が 二人にとって ちいさな幸せのひと時であった



次回に続く